弘樹と綾華の子供は、まもなく保育器に入れられた。産まれるまでに時間がかかり、少し弱っていたためだ。


しかし、しっかりと力強い呼吸をしている。


静かに寝ていた赤ん坊が、突然泣き出した。まるで、保育器の外に現れた父親を感じたかのように。


弘樹は泣き続ける我が子に微笑み、語りかけた。


「強く生きて……俺の代わりに母さんを守ってくれな、<ruby><rb>優輝</rb><rp>[</rp><rt>ゆうき</rt><rp>]</rp></ruby>」


愛おしそうに優輝を見つめていた弘樹の背後から、気遣わしげな声が響く。


「……弘樹」


その声が聞こえた瞬間、弘樹は急いで涙を拭い、振り返った。


そこには、悲しそうな目をしたキズナが立っている。弘樹はそんなキズナに笑顔を向け、静かに呟いた。


「もう大丈夫だ。綾華も優輝も……きっと強く生きてくれる。これで、俺も安心して還れるよ」


「あなたなら、きっとまた歩き出せる……新しい人生を。こんなにも、人を愛することが出来たのだから」


「ありがとう、キズナ」


弘樹が微笑みながら、キズナと握手を交わした。


「さて、ツキの出番だね!!」


ツキが羽根をパタパタさせて前に進み出た。


弘樹はツキに笑いかけながら頷く。それと同時に、弘樹の体は消え、小さな光の塊に変わって空へ昇っていった。……ツキに導かれながら。




一つの魂が旅立ったその部屋からは、生まれたばかりの赤ん坊の泣き声だけが、いつまでも……いつまでも響いていた。