「うわっ、桐生か! びっくりしたぁ!」


開いた扉の先には、驚いた顔をした恭が立っていた。


「恭!」


蒼依と光璃が駆け寄り、無事を確かめた。どうやら怪我はないようだ。それどころか、ピンピンしている。


「松下、大丈夫か?」


「へ? 何が?」


隼人の問いかけに対し、恭がけろっとして問い返した。あまりにも間の抜けた顔をしている恭に、隼人が疑問の目を向ける。その横から、蒼依が準備室を指差しながら震える声を出した。


「だって……今、銃声が……」


「銃声?……あ、あれか!」


恭は思い出したように呟き、蒼依達に両手を合わせて謝った。


「ごめん! 部屋に入ったら、でっかいゴキブリがいてさ。こっちに飛んでくるもんだから、びっくりして撃っちゃった」


恥ずかしそうに笑いながら言う恭に、全員が呆れ顔を向けた。それに気付いた恭が慌てて付け足す。


「ちょ……お前らはバカにするかもだけどな、めちゃめちゃ大きいゴキブリだったんだよ!」


「もういいよ、ゴキブリは。じゃあ、誰かいたわけじゃないのね?」


蒼依が、貸していた拳銃を恭から受け取りながら問いかけた。その言葉に、恭が軽く頷いて見せる。


「うん、見て回ったけど誰もいなかった。さっきの物音も、備品がバランス崩して倒れただけっぽい」


「そっか。……桐生達の方は、地図見つかった?」


この学校へ来た本来の目的を思い出した蒼依が、隼人と光璃の方に視線を移しながら尋ねた。


「あぁ、使えそうなやつを何枚か持ってきた。けど、やっぱり『Separate World 管理局』なんて文字はどこにもなかった。現実世界通りの地図だ」


隼人が険しい顔で自分の鞄から何枚かの地図を出して見せた。そして、すぐにそれらを仕舞い、下駄箱の方向を親指で指しながら指示を出す。


「地図も手に入ったし、とりあえず松下の家に戻るぞ」


隼人は少し警戒するように辺りを見回している。先ほど感じた視線のことが気になって仕方ない様子だ。


そんな隼人を先頭に、四人は再び恭の家へ向かって歩いていった。