結局、二人が隼人の家を出発したのは、それから二十分後のことだった。


前を歩く隼人はいつも以上に険しい顔で、かなり機嫌が悪そうだ。そんな隼人の後ろを歩きながら、蒼依が少し慌て気味に謝った。


「ごめんってばー!そんなに怒らないでよ」


「やっぱり放っていくべきだった」


後悔の念が滲み出ている声で呟く隼人に、蒼依が眉間にしわを寄せる。しかし、置いていかれる事を恐れ、明るい声で問い掛けた。


「ねぇ、これからどうするの?」


「とりあえず、『Separates World 管理局』ってのを探す。そこに行けば、何かわかるだろ」


『Separate World 管理局』。それは、昨日受け取ったカードの最後に書いてあった言葉だ。恐らく、Separates World全般の運営を行っている機関なのだろう。


「そっか。一体どこにあるんだろうね。てか、本当に帰る方法なんてあるのかな?」


心配そうに俯いて話す蒼依を横目で見ながら、隼人は軽く首を傾げた。


「さぁな。けど、来る事が出来たんだから、帰ることも出来るだろ。……最悪、この世界を壊してでも帰ってやる」


隼人の意思の強さに、蒼依が目を見開きながら尋ねた。


「壊すって……そこまでして帰りたいの?」


「文句あんのか」とでも言いたげな隼人の視線を感じ、蒼依は慌てて言葉を付け足した。


「や、私も帰りたいけどさ。なんか、桐生は異常に元の世界に執着してるっていうか。何かあったの?」


「別に……」


隼人は明らかに『何かありました』的なオーラを醸し出していたが……触れられたくないのか、さっさと話題を切り替えてしまった。


「そんな事どうでもいいから、お前も帰る方法考えろよ」


――帰る方法かぁ。


考えを巡らしていた蒼依が思い付いたように口を開いた。


「あ、この世界の一番端まで行ってみるとかは?行き止まりになるまで真っすぐ進んでいくの!そしたら、いつか出口見つかるかも!」


しかし、蒼依の閃きは隼人の次の言葉で一蹴されてしまった。


「それはもう検証済み。この前、県境まで行ったところで見えない壁に阻まれた」