隠す人



二宮がその日の仕事を終え自宅に帰りついた頃には、時計の針は夜中の12時を回っていた。

傍目から見ていても、激務の一日だった。
夫人を家に送り届け、社に戻りまたマスコミにもみくちゃにされ、電話対応をしながら社葬の段取りと残っている仕事を片付け、尾行する刑事を撒いたり見つけられたり。

さすがの秘書ロボットも燃料が切れたのだろう、自宅マンションに向かう最後の坂道を上っていく足取りに力が入らない。

坂道の途中で立ち止まり、振り返った。
尾行を続ける二人の刑事が、二宮よりさらに遅れて坂道を上ってくる。
こちらもお疲れのようで、もはや身を隠す気力もないようだ。

「どこまで付いてくるんですか」
二人が追いつくのを待ち、半ば呆れ顔で尋ねる。

「いえ、我々はあなたに気づかれないように尾行していますので。お気遣いは無用です」
・・・だから、もうばれてますってば。

尾行している警官と嫌疑者が、肩を並べて歩き出す変てこな風景。

「私を尾行しても、無駄ですよ。私は犯人じゃありません。こんなことにお金を使うなんて、税金の無駄遣いです」
歩きながら、二宮は改めて身の潔白を訴えた。

「それで済んだら、警察いりませんよ」

「その言葉を、信じろと?最初の証言で、嘘をついたあなたの言葉を?」

二宮は、反論しなかった。

「もう一度聞きます。あなた、社長が殺されたとき本当はどちらに?」