「では、行って参ります」
二宮が立ち上がると、香港カポックにも声をかけた。

「西さん、出かけますよ」

「え?もしかして、ばれてる?」
香港カポックはぼそぼそ小声で独り言を言いながら、臨時秘書室を後にした。

・・・当たり前だ、ばれている。


「カナダから帰国する社長の奥様を迎えに成田空港へ行って参りますが。ご一緒しますか?」
二宮はエレベーターの「開く」ボタンを押し、カポックが乗り込むのを待っている。

「・・・いいです。うちにも車があるので」
完全に尾行がばれているのを悟った西刑事は隠れるのをやめ、立ち上がった。

「いえ、うちの会社はISO14001を取得しているので、同一目的地ならば一台に乗り合わせることになっているんです。それに」

下へ下へと降下していたエレベーターがスピードを緩め、目的地に到着する。
地下2階、駐車場のある階だ。

「この人たちを撒くために、ちょっとラフな運転をする予定ですので。一緒に撒かれてしまいますよ?」

エレベーターの扉が開いた。