隠す人



立ち入り禁止になっていない、1階下の会議室。
そこに、エグゼクティブ・フロアの面々が、順次入ってくる。
社長の亡き後、今後の対応を協議するための秘密会議が催されるのだ。

一番最後に入ってきたのは、二宮惠一だった。

「遅くなりまして申し訳ありません」

「珍しいな、君が遅刻なんて」
牧沢副社長がちらりと、腕時計を見る。

「刑事を撒くのに、少々手間取りまして。私の事を、疑っているんだそうです」

「先輩、疑われてるの?チョー受ける。なんで?」

「昨日の供述の、嘘が分かられてしまったんですよ」

「へぇ。お前、嘘つくの下手だったんだ」
他人事のようにメガネを拭いている佐伯課長を、二宮は意味ありげに見た。

「会議室にいたと言っただけなんですが。佐伯課長に指示されたとおりに」

「え?僕、資料室にいたって言うよう言ったんだよ?変な疑いをかけられないように、現場にいなかったことにしといたほうがいいと思ってそう言ったんだけど。かえって裏目に出ちゃったねぇ」
佐伯課長は白々しく答える。

「二宮君。ここだけの話にするから、正直に言いたまえ」
牧沢副社長が、テーブルの上で両手を組んだ。

「君が、社長を殺したのか?」

「いいえ」

「しかし君は、社長が殺されたとき、一緒に部屋にいた。本当に犯人を見ていないのか?」

「見ていません。私のいた場所からは、犯人は見えませんでした。ドアの影になっていて、見えなかったんです」

「犯人につながるような言葉を、社長は言ったりしてなかったか?」

「いいえ」

「ふむ」
牧沢副社長は、腕組みをした。

「今の段階ではなんとも言えないが、内部の人間の犯行という可能性もある。ここにいる我々も含めて」