「・・・なぜ、そう思ったのですか?」
原田刑事が、眼を鋭く光らせ二宮を見つめる。

刑事と嫌疑者との、腹の探りあい。
原田と二宮の間に、見えない火花が散る。

しかしそれは、次の二宮の一言で、あっけなく終了した。

「朝、私を尾行されてましたよね?カツラと付けヒゲで」

ガビーン。
あの完璧な変装が、見破られていたなんて。

「そ、それは私の通勤スタイルです。私くらいの刑事ともなると敵も多いので、変装しないといけないのです」

「そうですか。まぁ、そういうことにしておきましょう」

「それはともかく」
原田刑事は咳払いをすると、追及したい本題を口にした。

「あなたがいたと言っている会議室ですが、本当に佐伯課長とお二人で?」

「はい」

「妙ですねぇ」
(西!このセリフの使用例だ!ちゃんと聞いとけよ!)
原田は二宮の目を見たまま、ゆっくりと二宮に歩み寄る。

「佐伯課長さんは、会議室にはあなたとではなく、掃除婦の小岩さんと一緒にいたと証言しています。それに掃除婦の小岩さんは、会議室にはあなたはいなかったと」

「え・・・」
二宮の顔からあふれていた余裕が、消えていく。

「あなたは、本当は会議室ではない場所にいたのでは?」
原田刑事の追及が続く。

「例えば、この部屋とか」

二宮は少しの間、押し黙っていたが、突然口を開いた。
「私だけが嘘をついているとは、限らないじゃないですか。私だけが本当のことを言って、他の全員が嘘をついていないと、どうして言えるんですか?」

それもそうだ。
しかしその口調に、常に冷静沈着を保ってきた二宮が初めて見せるわずかな動揺が表れていたのを、原田刑事は聞き過ごさなかった。

「それでは、失礼いたします」
冷静を装い退室する二宮。
原田刑事はその姿が消えるまで、彼に鋭い視線を浴びせていた。

間違いない。
彼は、何かを隠そうとしている。