西刑事は床に残された、一島社長が倒れていたところに縁取られた白いテープを指差した。
西が座っている部屋の一番奥、秘書のデスクからは、その人型の向こうに出入り口が見える。

「社長は部屋の奥に向かって倒れています。てことは~、犯人は出入り口側、またはドアを開けて外の廊下から社長を撃ったことに、なりますよね?私が犯人だったら、そのまま部屋から逃げたくなると思うんですよ。わざわざ部屋の奥に入って拳銃を隠しますかね?」

「犯人が、第一発見者を装っていたら?社長を撃った直後、第一発見者になりすましたら、拳銃を外に隠す暇はない。この部屋のどこかにあるかもしれないだろ」

「それは、二宮さんが犯人って前提ですよねぇ」

「言っておくが、お前のタイプだから犯人じゃないっていう理論は、成り立たんぞ」

廊下に面したドアから、警備員が顔を出す。
「元社長秘書の二宮さんが部屋に入りたいと言ってますが、どうしますか」

「なに?自首したいってか?」

「違いますよ」
警備員の背後から、二宮の声。

「観賞魚に、餌をやるんです」

応接テーブルの脇に水槽があり、金魚が1匹泳いでいた。