供述調書6:掃除婦、小岩節子(オバーサン)

こういう場所でのやり取りは、掃除会社の面接以来なのだろう。
小岩節子は、被っていた三角巾を数珠のように両手でもみくちゃにしながら、おどおどした様子で部屋に入ってきた。
ぺたっとした頭髪はほとんどが白髪、背中も曲がり始めており、もう年金をもらえる年齢だろう。こんな老女が大企業の社長室で仕事を続けていることがある意味不思議だ。

「小岩節子っちゅうもんでモゴモゴモゴ」
正しい言葉遣いへの自信のなさが、やたら歯切れの悪い語尾に表れている。


以下は、小岩節子の語った供述調書である。

「今日は朝8時から、トイレ掃除とゴミ回収をやっちょりましモゴモゴ。ゴミ回収が終わった頃に、佐伯課長さんがお呼びになられて、会議室で、課長さんと資料配りしちょったっとモゴ」

「会議室の資料配りは、佐伯課長とお二人でされたんですか?」

「はい、二人だけでございモゴ」

「その間、誰か会議室に入ってきたりしませんでしたか」

「? いいえ、入ってなかとでモゴモゴモゴ」