供述調書1:副社長、牧沢浩(ジェントルマン)

牧沢は、葬式のときに遺族に対してするような神妙な面持ちで、刑事二人に軽く会釈すると、用意されたイスに腰掛けた。

「こういう事態は初めてですので、何をどのようにお話すればよいのやら」

「大丈夫ですよ。普通は皆さん初めてですので。こういうことに何度も巻き込まれる一般の方は、コナン君のお友達くらいですよ」
原田刑事が西の足を踏んづけて黙らせた。

「これからお聞きする事に、正直に、正確にお答えください」

以下は牧沢浩の語った供述である。

「私は、副社長室のデスクでお茶を飲みながら新聞を読んでいました。レアメタル市場の動向に関する記事が載っていましてね。沢渡君が一緒でしたよ。毎朝、今日のスケジュールを教えてくれるんです。あんまり聞いていませんけど」

「社長は社内でも人望が厚く、とても人から恨みを持たれる人ではありません。お金目当ての、部外者の犯行じゃないんでしょうかねぇ。ただ少し気になるのは、秘書の二宮君ですね。突然の海外転勤が気に入らなかったみたいで、社長とは毎日のように口論になってましたねぇ。いや、でも二宮君は犯人じゃないですよ、彼は頭が切れますからね。そんなつまらないことで、社長を殺すわけがない」