「・・・では、事件が発生した時間にこの階にいたのは、ここにいらっしゃる皆さんだ、ということですね?」

ここは、一島重工本社ビル・24階にあるエグゼクティブ・フロア。
その会議室に集められた関係者を、原田刑事は一瞥した。

「じゃぁ順番に、役職とお名前を言ってください」

「副社長の、牧沢浩です」
「秘書課長の、佐伯知広です」
「副社長秘書の、沢渡夏子です」
「・・・秘書課の、星野美奈です。一応、社長秘書です」
「秘書課の、二宮惠一です」
「お前、もう秘書課の人間じゃないだろ!」
佐伯課長が小声で揶揄する。
「・・・掃除婦の、小岩節子でござりまス」

自慢じゃないが、原田刑事は一度見聞きした人の顔と名前が一致しない。
原田は、脇の西刑事の取っていたメモを見た。
完璧だ。お前、なかなかやるじゃないか。
西のメモには、役職と名前のほかに見た目の印象まで書き込まれていた。

副社長:牧沢浩(ジェントルマン)
秘書課長:佐伯知広(メタボハゲ)
副社長秘書:沢渡夏子(フェロモン)
社長秘書:星野美奈(AKB48)
自称秘書課員:二宮惠一(インテリ)
掃除婦:小岩節子(オバーサン)

「それでは、別室で一人ずつ事件発生時の状況についてお聞きします。西君、メモを頼む」