「あそこにワンちゃんが―…じゃねえよ。
全く。本当にドジだな―、もしそれで心愛を抱いていたらどうすんだよ。」

そうだ…よね。今は私一人だから怪我をしても別にいいけどもしも…もしも、心愛を抱っこしてさっきみたいに転んでいたら…心愛まで怪我をしちゃう。

「……ごめんなさい。」


南の言うとおりだよね。私、もっと落ち着かないと……。


「ま、お前が怪我さえしなければいいんだけど。
気をつけろよ。」

「うん……。」


私はショックで下を向いていると視界に南の手が入ってきた。


「ほら、行くぞ。犬、見たいんだろ?

手、繋いでやるよ。そうすりゃ、さっきみたいに転びそうになんかならないだろ。」

目を細めながら笑っている南。
本当。私が言ってほしい言葉をなんで知っているんだろう。

「うん…!ありがとう。
私、南とずっと手繋ぎたかったんだ。」

「な、なんだよ急に。

ほら、行くぞ。」

そう言うと南に手を引かれてどんどん中に入って行った。