だが、誰が何のために本を盗んだのかいまだに判明しない。

 子吉沢は給食を終えると、すぐに校庭に出て行った。理々と話したくないからだ。

 広い校庭の角で子吉沢は独りでボッとしていた。

「あ、あの……」

 田脳だった。未だにこの学校にいるということは、六年一組の生徒はラブレター事件を親に誰にも話していないことになる。

「どうしたんですか?」

 子吉沢は直接関係のない田脳が話しかけてくること事態ありえないので、不審なまなざしで見つめた。

「こ、これを……」

 田脳は一冊の本をさし出した。

「何ですか、これ?」