「総司と平助はどうだ?あと一とか!」

「いや、確か総司は今見回り中で、平助は午後の指南役だったな。一は密偵の仕事であんまり屯所にいないから期待できないな〜」

楓のかくれんぼ計画に段々乗り気になってきた永倉と原田。気がつけば人選を楽しんでいる。

「じゃあ八十八も無理やな。薫ちゃん誰かおれへんか?」


「え?俺?!…う〜ん。では、六番隊の馬越三郎を呼んでみましょうか」

浅野は、独り言のように呟いて、静かに部屋から出て行った。


「馬越?誰やそれ」


楓は入隊して一年近くになるが、未だに自分の身の回りにいる極少数の名前しか覚えていなかった。当然、馬越なんて名前も今初めて耳にした。

「お前少しは人に興味持てよ…」

永倉が呆れて深く息を吐く。

「わははは!馬越をここで知らない奴なんてお前くらいなもんだぞ?!」

原田がつむじを触りながら大声で笑った。

「なんや?そんな有名な奴なんか?」

「有名もなにも」

「島原でも名が知れ渡ってる」

永倉と原田は、口々に馬越を評価する。


「ええ男って事か?」

「いい男もいい男!美男子よ!!」

「総司とはまた違った美男子だよなぁ」

うんうんとお互いの意見に納得する二人。その二人に冷え切った目線を送る楓。
普通の女の子なら、“美男子”という言葉を聞いただけで舞い上がるものだろう。しかし残念な事に、楓は普通の女の子には該当しない。“美男子”の響きに全く反応しないのだ。

「総司は美男子やったんか?」


「「……お前は」」


原田と永倉は、流石に楓の美意識を疑った。