――五月三十一日


「王手」


「……」



――ガシャーーン!!


「あっ!!テメッ!何してくれてんだよ?!見たよな?!!今俺王手掛けたの見てたよな?!」

「知らんなぁ」

「こンの女!!表出ろオラァ!!!」

「上等や!刀持って来い!!」


昼前の穏やかな屯所内、爽やかな晴れ空に似つかわしくない怒号が聞こえる。

この日は、偶然にも非番が重なった二番隊と十番隊。

特にやる事のない原田が、自室に篭っていた楓を誘い将棋をさしていた。最初は対局に集中していたが、やはりこの二人が揃うと、ただじゃ終わらない。


「何だなんだ〜?また誰かと喧嘩してんのか?!」


丁度稽古を終え、廊下を歩いていた永倉が心配して原田の部屋を覗いた。


「あ!新八!!聞いてくれよ!こいつ本当に性格悪いんだぜ?!!」

「あんたのそのせこい将棋が気に入らないんや!!デカイのは図体だけか?!」

「んだとこの野郎――ッ!!」



「…こりゃひでぇ」



永倉は、取っ組み合いをする原田と楓を完全に無視して部屋の外から内部を見渡した。