「このままじゃ明日になっても話が終わらん!!いいかよく聞け!
俺が言いたいのは六月四日早朝に一番隊と八番隊で四条河原町の枡屋に御用改めするってことだ。その詳細を話す為にここに着てもらってる!解ったか?!!」

更に不機嫌になった土方は半分投げやりな口調で本当に簡単な説明をした。


「御用改めですか?それはまた何で?」


楓が密偵として枡屋の喜右衛門に近づいている事を知らない藤堂は、何を根拠に御用改めに入るのは当然疑問に思う。
土方は、やっとまともな質問が返ってきたことに満足気な表情で頷く。


「監察の情報では、最近頻繁に長州の浪人が京に出入りしてるらしい。ただの雑魚ならそこまで警戒することも無かったんだが、今来ているのは少し厄介な奴らでな」


「…もしかして、会議で言った吉田なんとかって奴ですか?」


藤堂の機敏な反応に土方の眉間の皺が少し浅くなった。

「そうだ。そして、今回御用改めに入るの枡屋は、吉田を始め、倒幕過激派の指導者と頻繁に接触しているらしい」

土方の話しを聞いて、藤堂の頭の中にはさっきまで話していた山南の言葉が甦る。


「重要な任務…か」


「そうだ。ここでしくじったら、今までの苦労が水の泡になる上、未然に防げるかもしれない長州の動きを見過ごす事になる。
絶対に喜右衛門を生け捕りにしろ!
失敗したら切腹だ!いいな?!」


「「はい!」」


土方の鋭い言葉に気負されることもなく、二人の若き組長は威勢良く返事をした。

「よし。下がれ」

自信に満ちた沖田と藤堂の目を見ると、即座に手を振って出て行けと合図する。

二人は土方に頭を下げ、各々の隊務に戻るため、部屋を出て行った。




「ふん。生意気な返事しやがって」


土方は、逞しくなった背中を横目で見送りながら、確実に成長している二人に口元を緩ませて、再び溜まった仕事に取り掛かる事にした。