「あれは…人間」
荷物を詰め込んだ滑車を牽く男。煤まみれの腰の曲がった老婆。着ている物が焼けてしまったのか、褌一枚でふらふらと歩く中年男。そこら中に傷を負った赤ん坊を抱え、涙を流す女。一人で泣きじゃくりながら彷徨う子供。
数え切れない程の人々が、向かう宛も無く歩き進む。皆、絶望の色を滲ませていた。
「…何て事だ!この戦は…俺の理想は…」
壮絶な光景に耐え切れなくなった久坂の膝が砕ける。四肢は震え、目の前の風景が激しく歪んだ。
「仕方ないのだ久坂。これが日本の都・長州を造るための第一歩なんだよ」
――…違う
「彼らは、新しい都を造るのに必要な犠牲だった」
――こんなはずではない
「我々は新都の創造者として、この光景を見届ける義務がある」
――こんなっ…

