「よーし!ここで火の野郎を食い止める!時間あらへん。どんどん壊せい!」
その隙を突くように、あっという間に二階建家屋の屋根に上ってしまった鶴治郎が叫ぶ。
生死を懸けた一世一代の大仕事に、半纏を纏った男たちは興奮にも似た高揚感に満ちていた。鳶職の者が建物の要を外し、そこに気を昂ぶらせた男たちが次々と家屋に体をぶつけて壊す。
地道ではあるが、こうする他手はない。
「オメェら身が焼け焦げても作業を止めるんじゃねーぞ!」
鶴治郎の激と火の板挟みになりながら、も組の火消たちは懸命に家屋を倒し続けていた。
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