「…楓?」

「まだ何かあるんか?」

いつまでも冷たい態度をとる楓を見て、沖田は柔らかく微笑んだ。



「…触って…いいですか?」

「?!」

沖田の不可思議な要求に目を丸くする楓。
沖田はそんな楓を無視して、そっと頬を撫でた。
冷たい沖田の手がキメの細かい楓の頬に触れる。

楓はどうしていいかわからず、されるがままの状態で硬直する。


「ケホッ…言っておきたい…事があるんです」


「…」


「……俺が、…一人の人間、沖田総司として最初で最後の意思を伝えたいと思った人…」





――パシッ!



沖田が喋り終える前に、楓の頬に触れる沖田の手が楓自身によって払われた。



「……え?」


流石の沖田も、この楓の行動には離し掛けていた意識を引き寄せる。


「甘ったれるな」


沖田の背を摩っていた手を離し、すっと立ち上がる楓。

「無条件で言いたいこと言えるとでも思ったんか?」

沖田に背を向け、投げ捨てた刀を回収する。

「そんなわけないやろ。笑わせるな!」


「…」

沖田は壁にもたれて勇ましく立つ楓の後姿を見つめる。



「その先を聞いて欲しければ、この戦が終わるまで生きてろ」


「…死んだら?」


沖田の問いに、楓は後ろを振り返り、にっと笑って大太刀を鞘から抜いた。



「無効や」



「…ケホッ…ふふ。手厳しいなぁ……」


沖田は、楓に見守られながら再び意識を失った。