――ねえ、知ってる?


今日楓が髪を結ってる赤い紐、前に俺があげたやつなんだよ?


嬉しかったなぁ…。


あいつさ、口は悪いけど誰よりも温かい人間だと思うんだよ。


ただちょっと不器用なだけなんだよ。





楓は俺の事忘れないでいてくれるかな?





俺のために泣いてくれるかな…?








暫く呼びかけ続けた永倉だが、藤堂の呼吸が段々弱くなっていくのを感じた。


「くっそぉおおおぉぉぉお!!!」


永倉は、藤堂を近くの部屋の隅に横たえさせ、中庭の木々を揺らすほどの雄叫びを上げる。
今弱った藤堂を助ける方法は、目の前の浪士たちを斬るしかない。
力などもうどこにも残っていないと思われた永倉の体には、不思議な力が漲っていた。


仲間を助けたい。


その一心で刀を振る永倉と対等に刀を交えられる者など何処にもいなかった。