幕末異聞―弐―


「…何を探しているんです?」


「…」

「ねえ?」

「うるさいなー!黙っとけや男女!!」

沖田の態となのか無自覚なのかわからないしつこさに耐えきれなくなった楓は、手に持っていた群青色の風呂敷包みを振り向き様に投げた。


「わわっ!!」

暗くて視界の悪い室内から突然、顔と同じ大きさの物体が飛んできて沖田は焦る。

「あ…危ないじゃないですか!」

とは言いつつ、しっかりと反応して包みを抱えて立つ沖田。

「それや」


「…へ?」

「それ探してたんや」

「これを?」

楓は苛立ちを露にして沖田の持っている物を指差す。
沖田は首を傾げて風呂敷包みを色々な方向から見回した。片手でも十分持てるほど軽量の包みに興味深々の沖田は、開けてくれと言わんばかりに目を輝かせる。

「開けたいなら開けてええで」

「じゃあ遠慮なく」

常識のある人間なら振りだとしても断るところだが、沖田に常識は通用しない。楓も沖田の常識のなさは熟知しているため、一切何も言わない。
ドシっと障子近くに胡坐をかき、風呂敷包みの結び目を解き始めた沖田。


「……え?!」


包みの最後の結び目に取り掛かった所で、沖田は驚きの声を上げた。

「何故楓がこれを持っているんですか?!」

立方体だった風呂敷包みは正方形の風呂敷へと戻った。沖田は、群青色の正方形の中心に置かれた物に目を奪われる。