「総司、平助。よくやってくれた!」

永倉と楓が自室に戻るのと同じ頃、局長室ではいつもよりご機嫌な近藤の笑い声が響き渡っていた。

「流石は、新撰組の先鋭隊だ!誇りに思うぞ!!わははははは!」

「あっははは!近藤さん褒めすぎですよ〜!あんまり褒めると平助が図に乗っちゃいますよ?」

「何で俺?!」

今さっき命を張って来たとは思えなほど和んでいる沖田と藤堂。近藤は、二人が無傷な事を幾度と無く確認し、ようやく力を抜いて溜息をついた。


「きょーくーちょう。こんな簡単な任務でいちいちその反応してたら話しが一向に進まねぇよ」

和気あいあいと話をする三人に厳しい言葉をかけたのは、他でもない鬼の副長土方であった。

「まあまあ土方君。少しくらいいいじゃないか。
よく無事で帰って来てくれましたね。平助、総司」

「山南さん」

土方を隣で宥めるのは、もう一人の副長山南。藤堂は、山南の労いの言葉に暫し感動していた。


「あ〜あ。土方さん仲間外れ〜」

「そんな気持ち悪い歌作るなッ!!
もういいだろ!余裕がねーんだよ!さっさと報告しろ!」

土方は近藤を見て、しっかりしろとでも言っているように眉間の皺をより一層深める。

「そ、そうだな。確かに時間はない!では早速、両組長報告を頼む」

近藤はごほんと咳払いをして、居住まいを正す。それに合わせて、部屋の中は無音になった。


「はい。報告いたします。喜右衛門の屋敷を調べた所、小さな隠し部屋の中の床下から、大量の鉄砲や火薬、槍、などが見つかりました。恐らく、長州の者に頼まれて揃えた品々だと思われます」

藤堂の報告に、沖田を除く誰もが言葉を失った。


「…まさかそこまで動いていたとは」


「…どうやら、やつらは本気で幕府を潰す気らしいな」

山南と土方は予想以上の現状の悪さに動揺を隠し切れないでいた。


「それで、今喜右衛門はどうしているのだ?」

この最悪の状態の中、ただ一人近藤だけは冷静を装っている。その瞳には、何かを覚悟しているような潔さが見えていた。

「現在、蔵で一さんが尋問をしています」

沖田がいつになく真剣な顔つきで近藤の質問に即答する。