「嫌な奴。ところで、それ一体なんや?」
楓は、さっきの形のまま放置された綾取りの紐を目で指す。沖田も、思い出したように目をやる。
「…何でしょうね?」
「は?」
複雑に絡まった紐を見て首を傾げる沖田。楓はその姿に対し首を傾げた。
「だってあんた慣れた感じで綾取りしてたやん?!」
「あれでたらめです。私、不器用なんですよ!
適当にやってたらなんかできるかな〜って思って」
「…阿呆かーッ!!」
「あッ!」
楓は思わず沖田の手から白い紐を引っ手繰る。
「綾取りってのはな、こうやるんや!!」
自分の両手に輪をかけた楓は、凄い速さで綾取りの紐を引っ張ったり交差させたりしている。
「楓、綾取りできるんですね!!」
「まあな」
鼻を鳴らして自慢気に作業を進める楓。沖田は、期待に胸を膨らませて動く紐に注目した。
「見ろ!!」
楓が威勢良く完成の声を上げる。
「…楓?」
「何や?素直に褒めてええんやぞ?!」
瞬きもしないで驚いている沖田に楓がふんぞり返った。
「…一応聞きますけど、それ。何ですか?」
「箒!!」
「…あんなに大袈裟に手を動かして出来たものは箒?!!」
違う意味で驚かされた沖田は、立ち上がって作品を誇る楓に向き直る。
「何やねん?!うちの箒に何か文句でもあんのか?!!しばくぞコラッ!!」
「箒には何の文句もありません!が、それを誇っている貴方の神経に文句があります!!そのくらいなら私だって作れますよ!何自慢してんですか?!」
「はぁ?!お前馬鹿か!!見ろこの柄の部分と掃く部分の比率を!
正に芸術作品やんか!そんな事もわからんなんてホンマ馬鹿や!
馬鹿馬鹿馬鹿ッ!!」
「ば「馬鹿はお前や」

