「そんなに気を張ってたら成功の神様が逃げてっちゃうよ?自然体で臨むのが一番」

右手の人差し指を立ててにっこりと笑う沖田に、藤堂は口を尖らせた。

「できるもんならやってるよ」

リスのように頬を膨らませた藤堂を見て沖田は思わずぶっと音を立てて吹き出す。

「ぷっくくく。そうですよね〜!そこが人間の難しいところだね」

うんうんと頷きながら大股で歩いていく沖田。

「本当にね…」


ふうっと重苦しい溜息をついて藤堂が後を追う。
赤くなった太陽が山に隠れる頃、この日の祇園祭の準備は切り上げられ、皆、各々の家に帰っていった。藤堂は、半分ほど組み上げられた迫力ある神輿の姿につい足を止めて見入ってしまった。


(命をかけても守らなきゃ!京都を)


神輿に向けて一礼し、藤堂は再度自分の使命を自身に言い聞かせる。
焼けるような夕焼け空が帰営する一番隊と八番隊の影を伸ばす。


明日の今頃、どのような状態で同じ空を見ているのか。それは誰にもわからない。