「見つかんねーなー」

「もう後少しで刻限だぜ〜?どうするぱっつぁんよ〜?!がははは!!」

「っるせーな!絶対見つけてやる!!」

自分が捕まってしまい、勝負に興味がなくなった原田は、焦る永倉をずっと後ろから茶化し続けていた。
出だしは好調だった永倉だが、残りの三人がどうしても見つけられない。
屯所のあらゆる場所を探し回ってみたものの、隠れた形跡すら見当たらなかった。

(早く見つけねーと楓の思うツボじゃねーか!それだけは絶対避けたい!!)

永倉は、小さく舌打ちをして歩く速度を速める。原田も切腹後の残る腹を掻きながら付いていく。




「きゃーーーッ!!!」



永倉と原田が屯所を彷徨っていたその時、此処では滅多に聞く事の出来ない女の甲高い悲鳴が聞こえてきた。
二人は顔を見合わせ、そう遠くない悲鳴の出所目指して走った。
この新撰組内で唯一女性の出入りが許されている場所。
それは、炊事場しかなかった。
新撰組の食事は、週の内二日は女中を雇って食事を作ってもらい、残りの五日間は隊士たちが当番制で賄っているのだ。そして今日は女中が来ている日。

永倉は炊事場に近づくに連れて、万が一の事を考え愛刀の柄を握った。


「――ッ!!」


「―――っ」


炊事場の入り口が見える頃には、何か口論している声が聞こえた。

(女中は無事のようだな)

永倉は口論に混ざる女の声を聞いて、少し安心した。


「何でこんな所に入ってるんですか?!」



「「……あぁ?!」」