彼はこのとき、本郷にある東大に程近い場所で一人暮らしをしていた。 



明日、私が行く場所にも自宅から近いから気にしないで、と言ってくれた。



普段は、大学へ行くときも家庭教師のバイトのときも、大概は自転車を利用していると言っていた。 



唯一、サークルの活動だけは、教養学部のある駒場校舎まで行かなくてはならず、そのときだけは電車を利用すると言っていた。



とにかく、生活する上で便利な場所であったから、よく自転車を走らせ、神田の古書店街や国会図書館まで足を伸ばしていたようだ。


彼にとっては、自転車は生活に欠かせない乗り物になっていた。