くじら




「藤堂先生が人を騙す…?」



ザアァと風の音がする。




「…瑠璃子さんは、優しい先生の久白兄さんしか見てないから分からないんですよ。あの人がいかに汚いか知らないでしょう」





―僕の汚いところを知らないでしょう?





先生も似たような事言っていた




「私は知りませんけど、誰にでもそういう所くらい…」



一つや二つあるはず…




「"くじら"。」




昴さんはテーブルをコンコンと叩いた。


「あの人の藤堂でのあだ名です。本人は嫌いで、呼ばれても返事はしませんけど……。一度呼んでみたらいい…」





「くじら…て海の中にいるあのくじらですか?」




「はい…。もうそろそろ帰りましょうか?今日の所はこれで…また会って下さいますか」






「…失礼な事をしなければ。私はまだあなたを信用してないですから、」






心外ですね。と昴さんは笑った