くじら




「さっき言った通りです。異端だって…、久白兄さんは昔色々あって、家督を継げなくなった。まぁ本人も継ぐ気はあまり無かったみたいですけど…」





昔色々あって…


「先生は何があったんですか、」




昴さんは窓の外を
眺めながら、言った



「学生の頃…、先生の奥方に手を出したとか何とかで、女性不振になったらしいですよ。……」




「…えぇ!」




「まぁ言わないでしょうね。久白兄さんは…そういう男ですから、良くも悪くも品性だけはありますし…」





「平気で話せるんですね、昴さんは。」



抹茶を飲んでいる彼を見る。



気にしてる様子は全然ない





「瑠璃子さんも、兄さんの事を知りたいと思ってお話してるんです。あの人、自分の事話すの嫌いみたいですし……」




「まぁ話しませんけど、ベラベラ話す方よりいいと思いますけど…」




わたしはあんみつを
食べながら言った





「僕はむしろ久白兄さんこそ、冷たい人間だと思いますね。平気な顔して人を騙して…」