くじら







「……ある時綾部様に呼び出され、藤堂先生の事を聞かされました。彼が何故“白鴉”という仕事をしてるのか、それを聞いて僕は彼に対する見方が少しずつ変わっていった。そして彼が完全に僕と榊家を没落させずにいてくれた…。彼は言ってくれました。『君ならもう一度榊家を作れる』と…」





もう一度…




そんな事があったなんて…





「…知らなくて、すみません…榊様…」




「…瑠璃子さんのお父上にも助けて頂きましたよ。謝らなくていいんです、もう…どうしようもなかったんですよ」





コツコツと彼は脇の階段を上がってふたのような物を外した




「…ここから行けば薔薇園は近いです、」



「…はい」



私はドレスが汚れないように階段を上った




「僕が……没落して良かった。君が本当に好きな人に会えましたから…」


「榊様…」



私の手の甲にキスをした


「またお会いしましょう、上手くいきますように祈っています」




「…ありがとう、旺史郎様」










榊様は 笑いながらふたをしめた




「幸運を、祈ります」