「……そう見えますか?」
「えぇ…。学生の時よりも。いまのあなたとは主人と同じくらい対等に話せているわ…」
主人…先生…
澄さんは ふっと窓をみた
「あの人もあなたと付き合ってると言った当初は怒っていたけど。もう今はなんともないわ……。花園や藤堂家はまだあなたを許してないけど、主人はもういいって言ってるわ。あなたの白鴉の仕事も…、『もうする事はない。時代が変わるって…』」
時代が変わる…。
「……先生が、」
「えぇ。私はよく…分からなかった…。けど時間は流れていき、人は変わっていく…主人が言ってるのはそういう事だと思うの。何時までも同じではいられない…、皆わかってるはずなのに…踏み出せないのよ…未来に」
「…はい」
小さく頷いた。
彼女は満足したように笑った
「もうお行きなさい、追っ手が来るわ…さようなら。藤堂久白くん、」
「…さようなら」
一礼して 部屋を出た
静かに微笑む姿は 昔と同じままだった
振り向かない。
さようなら、
「澄様…。失礼ですがこちらに不審者は…」
「いないわ…。」
レコードの音はもう 止まっていた

