私が綾部織人さんに会ったのは、
10才くらいだった。
その頃は英語も
外国にも全く興味がなかった
綾部伯爵のお家に
遊びに行くまでは…
「大きなお家ね。母様。」
綾部伯爵の家は
洋風のお城みたいな家で
とにかく大きかった
「えぇ…、」
母様は、驚いた顔で屋敷を見ていた。
「あああ…、」
ぴゅうと風が
吹き、帽子が飛んだ
帽子はくるくる飛んでいく
「まって――、」
「綾子―!」
母様の声が後ろから聞こえるけど
帽子をおった
大事な大事な帽子
お父様から貰った大切な…
気が付くと芝生の上にいた
帽子は木に引っ掛かってた。
「…取れない…。どうしよう…、誰か…」
辺りには誰もいない
鳥の鳴き声しかしない
「うぅ…」
「……っ、」
ガサガサッと音がし
木の葉が落ちてきた。
「な……に」