くじら

不安になった その時
一台の馬車が止まった




黒い馬車の扉は僕の前で開いた




「…藤堂久白さんでいらっしゃいますか?」




「…知らない人間に名は名乗れないお前は誰だ」





がっと腕を捕まれた
横にはこの前見た黒服の男がいた





「……三高の執事・瀬羽でございます。」



「……」



ギリギリと腕を掴む力が痛かった…



思考と今起きてる出来事が

うまく繋がらない事に焦った




「お迎えにあがりました。藤堂様…、澄さまに命じられて」






澄さまに命じられて…

まさか




一瞬で理解した






彼女は僕を騙したのだ…










「……腕を離して下さい。暴れはしません、馬車に乗る」



黒服の男たちは執事をちらりと見た



まだ腕を離さなかった


「藤堂家の名を知ってるのなら手を離せ」






一言低い声で呟いた





ぱっと男たちは自分から離れた




「…分かってくださり、光栄にございます。藤堂様」



「御託はいい、」



僕は馬車にのり呟いた






「これからの流れを話せ…。全部聞いたんだろう、澄さまから」









執事はにこりと笑った