くじら










その日から


僕は顔を合わせるのが嫌でわざと遅い時間に帰った




彼女とは少ししか話さなかった…

















「藤堂、お前大学はどこに行くつもりだ?」




倉田が笑いながら言った




「…帝大に行けと父は言うけど、分からない」



「そうだな…、憎たらしいくらい頭良いもんな。お前」




「どうも、倉田は留学だろう?英国へ…よく行くよな」




そうだなぁと倉田は言った



「…行きたいなぁ。」





倉田は5歳上の兄がいて家は彼が継ぐ


倉田は弟だからある程度は自由なのだ





きっと留学は出来るだろう






根拠も何もないが確信しながら考えた。




そして羨ましいと思っていた



倉田にはちゃんと夢、がある。



それは実現可能な夢



いつも自分を羨むけど本当は倉田が羨ましかった

















その日は学校から早く帰った


珍しく澄さんは出掛ける用事があるらしかった






用意された食事を食べ二階で本を読みふけった