くじら








二階で本を読んでたら灯りがふっと消えた






僕は手探りで一階に行った



「澄さん?」




「いるわ。大丈夫よ。久白君、他の家の明かりも消えてるわ…」



窓を指して澄さんは言った




慌てるでもなく彼女はいつも通りだった




「焦っても仕方ないわ、座ったら?」



だんだん目が慣れて澄さんが見えた。





「…暗いわね。昔の人はこんな中で暮らしてたなんて信じられないわ」



「はい…。」






「蝋燭も丁度きれてしまっていたから、灯りもないわ。ごめんなさいね」


「いえ…」





チリンチリンと風鈴の音がした






なかなか明かりはつかない






「静かね…、久白君」


「はい。」






「明かりがないと本読めないわね。久白君」





ふっと笑い声と言葉が漏れた








「いつも本ばかり見てる訳じゃないですよ。」





「そうね、最近はそうでもないわね。」





澄さんは平気そうに言った