くじら






「だからあの人が、家に帰らないというのは昔から分かっていた…。」






「……。」




「ごめんなさいね、こんな事言って混乱させて。」





澄さんはふふっと笑った


「いえ…」









その時は何だか自分
がすごく汚く見えた





「…泣いてるの?」



「……」



涙が頬を一筋つたった。
それが涙だと分からなかった






無意識に涙が出ていた






「何で……」



「ありがとう。私の為に泣いてくれて…」














































「先生。」





語るのを一旦止めて
口を閉じた



「………すいません。」




私は首を振った。





「…無理ならもう」




「話します。君に…、聞いてもらう事が大切だから。だから…続けます、」





先生は眼鏡を
外してわたしを見た。



「……」












澄さんから
話しを聞いた夜







彼女はいつも通りだった




「おはよう。久白君」



「おはようございます…」






「昨日は寝れた?大丈夫」




「はい、平気です。よく寝れました」