くじら

















珍しく澄さんは
夜遅くまで起きていた







「寝ないんですか?澄さん」


縁側でぼうっとしている





「あまり眠たくならないのよ。良かったら何か話してくれない?」



「話……」


僕は間をあけて縁側に座った。



「手紙、先生だったんですか。あの時から澄さん、ぼうっとしてるから」





「そうよ。―まだ帰れないって手紙が来たのよ…、」





だから…か




「…寂しくはないんですか?」



風がすっと吹いた


「そうね。…」







「……」





すこし苛々した。
涼しい顔で寂しいという



「……幸せなんですか?」




放っておかれて…。
一人で旦那は待っている





つい口に出てしまった
澄さんは え…と言った





「すいません。余計な世話かもしれませんが、僕は…澄さんがいま幸せだと言っても理解できません。」



「…理解できないって、あの人みたいな事言うのね」




澄さんは クスクスと笑った




けど笑い声は途切れた





「久白君の言う通りだわ、私は幸せじゃないわね。馬鹿みたい…、私分かってるのよ。子供じゃないんだから…」





「……」




「久白君、わたしね…」















―子供が出来ない体なの








哀しそうに笑った
澄さんの顔がはっきり見えた





「は……、」