くじら














「妻を放っておく旦那ぁ?」




「うるせぇよ。」



倉田に少し話してみた
案の定な反応だ。



「ん―、仕事なら仕事かもしれねぇ。けどなぁ…」




「旦那が帰ってこないで平気でいる神経が理解出来ない…」




母様はいつも
父を心配し、気遣っていた




彼女はそうでもない…



「……そうだな。もしかしたら気持ちがないか、旦那に絶対的な信頼があるか…だな」




先生に絶対的な信頼。




「…あるのかそんなもの?」




「あるかもしれないだろ?聞いてみりゃいいじゃねぇか」








































「私とあの人とのなれそめ?」




澄さんは
驚いたように笑った




「つまらないわよ、どうしても聞きたいの?」


僕は頷くと彼女は口を開いた







「…私の家はあまり豊かではない財閥の家だったの。あの人はそれなりのお家でね、婚約者もいたわ」





「……」




「ある日、あの人と偶然会ったの。仕方なく出た、貴族様の敷居の高い舞踏会…」





「わたしはあまり乗り気じゃなかったの。だって世界があまりに違うから、ぼうっと眺めてた」





「そしたら、あの人が話し掛けてきたの。『つまらないですか』て、私は頷いたわ。誰か知らない人だったし…」