君色ジンジャーティー


何だかこの一杯のために生活してきたって感じがする。
なんて、おっさん臭い考えなのか。
また一口。口内に、甘い味が広がった。

テレビの向こう側では、お笑い芸人が馬鹿らしいコントをやっている。
あ、このコンビ面白くないな。
私は無表情でそれを見つめていた。

笑いの沸点がおかしい。これは友人の恵理の言葉だ。
普段、あまりにも高すぎて無表情なくらいなのに、急に下らない下ネタで爆笑しだす。
そんな私を、友人は笑っていた。

いいじゃないか、沸点おかしくても。
一人ごちて、トーストに手を伸ばす。

私は固くなったパンの耳が嫌いだ。
そして、嫌いなものは先に処理してしまうタイプである。
つまり。

私は先にパンの耳だけ食べてしまう人間なのだ。
しかも高速で。ハムスターの如く。

コントが終わる頃には、パンの耳はきれいに消滅していた。
ついに、白い部分へ突入。
大口を開け、一口。

うまい。
感想なんか、そのひらがな三文字で充分だ。
私は某グルメリポーターのように「宝石箱や~」なんて言ったりしない。一般人だし。

小学校での調理実習では、確かピザソースを使っていたはずだ。
しかし、ピザソースは意外と辛い。
それを伝えたところ、母は私に教えてくれたのだ。

とりあえずケチャップとチーズ合わせときゃそれっぽくなる。

なんつーアバウトな。と驚愕したあの頃の私は青かった。
実際、そのアバウトな言葉通り作ってみたらうまかったのだ。
母、恐るべし。