どんどん色付くお湯。
棚から箸を一本だけ出し、かき混ぜる。
するとそれはだんだん濃くなっていく。
その様子は何度見ても面白いものだ。
ピピピ、と電子レンジが音楽を奏でる。
ああ忙しい忙しい。
かき混ぜる手を止めて、電子レンジに手をかける。
そして中身を取り出す。
香ばしい香りが鼻孔をくすぐった。
素早く小さな皿を出し、トーストを乗せる。
その後、再びかき混ぜる作業に戻る。
少しして、完全な橙混じりの茶色になった。
マグカップの中に、チューブに入った生姜を入れる。そして再びかき混ぜる。
生姜が完全に溶けたところで箸を洗い場に放り投げた。
後で洗えばいいや。
私はマグカップを左手に、皿を右手にリビングへと足を運んだ。
するとソファーに腰掛けている母が言った。
「太るわよ」
どう考えても、トーストに対する言葉だろう。
「別にいいしー?」
私は舌を出してまた足を進めた。
そうだ。
別に太ってもいいのだ。
私は目の前のことに一生懸命だし、後のことを考えるつもりはない。
というのは自分自身に関してのみだが。
テーブルに両手の物を置いて、椅子に腰を落とす。
テレビをつけた。
やっぱりバラエティーが流れていて、私はすぐに10のボタンを押す。
お笑い番組が映し出された。
私はマグカップを手に取り、一口。
「………………ふぅ」

