君色ジンジャーティー


二人で部屋に入り、適当に時間を使う。
私は風呂に入る前まで読んでいた漫画の続き、雛子はゲームだ。

しばらくして、ボタンのカチャカチャという音が止まった。
かわりに、すうすうといった静かなものになる。
私は、雛子の顔を覗き込む。

雛子は疲れたのか寝てしまっていた。
私は仕方なく、抱き上げてベッドへと運ぶ。
二段ベッドだが、上まで持っていくのは面倒くさい。

「………………おやすみ」

耳に入るのは、穏やかな寝息。
もう九時かと思うと、時の流れが早く感じる。
下でテレビでも見よう。

携帯を片手に扉へと向かう。
小さい豆電球のみを点け、自室を後にした。

なるべく音をたてないように、気をつけて扉の開け閉めを行う。
すうすうといった寝息は途絶えることがなかった。
ほっと胸を撫で下ろし、階段を下りる。

今の時間ならば、何をやっているだろうか。
適当なバラエティーでも見よう。
特に表情が緩むわけでもなく、ただ足を動かす。

「…………母さん」
「あら、どうしたの?」

母がデフォルメされた熊のデザインのマグカップを片手に歩いていた。
中には珈琲。

「母さん、寝れなくなるぞ」
「いいのよ。私は大人だから」

ババアの間違いじゃないか。
そう小さく毒づいて、私は台所へ向かう。
母は何かを呟き、そしてそのままリビングへと行ってしまった。