君色ジンジャーティー

少しして、書き終わったようだ。
私が覗き込もうとすると、雛子はすぐさまノートを閉じる。

「みせませーん」
「…………何書いたんだ?」
「みどりくんとのはなし」

ああ、求婚された話か。いや、もしかすると雛子から求婚したのかもしれない。
どっちにしろ子供の遊びには違いないが。
将来からかうか、からかわれるのだろうな。

雛子は、自らの勉強机の上に乗せたランドセルから算数のプリントを出す。
因みに雛子のランドセルは赤だ。それはもう、見事なまでの、赤。
私は青色で、よく男子からからかわれたのを覚えている。
四年生からただの鞄にしたけども。

なんて昔話は置いておこう。
私はプリントに目をやった。
一学期の復習のようで、書いてあるのは足し算や引き算。
さんすうブロックが大活躍するな。

「まずはこれ、わかるか?」
1+3の式を指差して尋ねる。
雛子はうんうんと唸りながら考えている。

早速ブロックに仕事だ。
私は四個取り出し、一と三の塊にわける。
「ほら、雛子」

雛子は私の手の内のブロックを目で追いかけている。
「こっちが一、こっちが三だ」
そして、パチンと二つをくっつける。

「さあ、いくら?」
「四!」

あえて正解不正解は言わず、答えを書くように促す。
それからは、雛子自らがブロックを使うように言った。
私は、どうしようもなくなった時のお助け役。
とりあえず、自分の数学の教科書を開くことにした。