君色ジンジャーティー


「ねーさん、もみちゃんから?」
「そう」

雛子が、小さな机にノートを広げてそう問うた。
私は携帯を閉じ、簡単に答える。
見る限り、雛子の宿題とは作文のようだ。

三橋椛。私と同い年の従姉妹だ。
何故か彼女の母、葵叔母さんには似ずにうちの母に似ている。
一時期、私の姉妹なのかと疑ったこともあるくらいだ。

椛は少々頭が弱いから困る。
少しして、英語の宿題の仕上げに取りかかることにした。

「はるくんからはなにもないの?」
そう無邪気に尋ねてくる妹。
止まっている手について指摘しながらも答える。

「何も無いさ。第一、ハルは私の電話番号もアドレスも知らないさ」
手を止めずにそう言う私に雛子は、ふうんと呟いた。

ハル、そいつも私の従姉弟である。
一応フルネームは坂本遥。男だ。
今は確か小学五年生で、元気にサッカーしているはずだ。
これで親戚その四になるか。

私には従姉弟が多すぎる。
まず、母さんに姉弟が多すぎるんだ。

母さん含め女三人、男一人。
そう考えると、遥の父の一叔父さんは大変だったんだなあと感じる。

再び手が止まっている雛子に注意し、宿題を片付ける。
何だ。案外やればできるじゃないか。自分。

脳内で自分を自分が褒めてやるという奇妙な光景を繰り広げてみる。
とりあえず、雛子の宿題でもみてやることにする。

「残ってるのは何?」
「にっきと、さんすう」

日記というのは今やっている作文のことだ。
私は算数に備えるため、机の引き出しからあるものを取り出した。
それは。