「──結城、またハデに転んだなー。大丈夫か?」


 今日の体育の授業は、全然得意じゃないサッカー。

 何故かパスを回され、もたつきながらもドリブルしていたらサッカー部のヤツに狙われ、挙げ句ハデに転んでしまった訳で。


 足を引きずる俺に、ニヤニヤ顔の佐久間が近付いてくる。


「うわ、超痛そう。保健室、一緒に行ってやろうか」

「一人で行けるよ。お前はサボりたいだけなんだろ?」


 ありがた迷惑な申し出を断り、俺は一人保健室を目指す。

 授業中の校舎内は静まりかえっていて、時々どこからか先生の声と、ピアノの音が聞こえてくる。


「失礼します」


 久し振りに入った保健室はもぬけの殻。

 なんだ、先生居ないんじゃん。

 机の横に並ぶ薬品棚を覗いてみれば、消毒液とか絆創膏とか、今の俺に必要そうなモノが並んでいる。

 先生を待つのも面倒くさい俺は、利用者届けに勝手に名前を書いて、勝手にあれこれと拝借することにした。


 なんで俺が保健室の使い方知ってるかって?

 そりゃあ、アレだ。

 去年、保健委員に入っていたからだ。

 結構ラクなんだよな、保健委員って。

 ラクだラクだ、なんてみんなが言うから、今年は倍率増加。

 そんなこんなで争奪戦に敗れた俺は、今年は図書委員だ。