「兄さんの具合はどう?」
里美は心配そうに言った。
「骨折だけだから、それ以外は元気だよ。ベッドに縛り付けられて退屈してるよ」
「それを聞いて安心したわ。それなら付きっきりで看病しなくて済みそうね。雅也、セブの美しい海に連れて行ってね」
里美は安心したように言った。
「ああ、時間をつくるよ」
僕は里美のために助手席のドアを開けた。
「元気ないのね、何かあったの?」
「いや、別に。セブは暑くって、少しうだっているんだ。そうだ午後からホテルのテニスコートで一汗流そう。小銭を稼ぎたい子供達がボール拾いをしてくれるらしいから、下手くそな里美でも大丈夫さ」
僕は明るさを装って、里美に言った。
そして僕は、思い切りアクセルをふかした。