練習中、彼とのバトンミスは一度も無かったし、

彼の走りもよく見て知っていた、


彼がコーナーを過ぎ、
グッと縮まった、1位との距離を見て

“イケる!”と思った私は、

青チームの子よりも、先に飛び出していた。


そして、思いっきり、手を後ろに伸ばして走る、
私の掌にバトンが触れた。


「ハイ!」と、

声をあげると同時に、
しっかりバトンを握り締め、

私はトップへとおどり出た。


歓声が凄かった。


もちろん、何を言ってるのか聞き取れはしないが、

夢中で走る私の耳にも、
“わーわー”と響いて入ってきた。


次の走者に、無事、バトンを繋いだ後、

ふと目が合った、彼の元へ、
自然と足が向かった私は、

右手を挙げた彼と、ハイタッチをした。


そしてとうとう、バトンはアンカーへと渡った。


うちのチームの学級委員と、
青チームの恭一のトップ争いだ。


どっちが勝っても、白組の勝ちなのだが、

選手として

“うちが勝つんだ!”と思いながらも…

私は、恭一の走りを見守っていた。