決着が着かないまま、15分が経過する。
流石に腕、体力の限界。
腕がもう上がらなくなって来る。霊力も使い過ぎた。
それはジュシフも同じなのだろう。
右手に刀を持ち、肩で息をしている。顔も真っ赤だ。

「はぁ・・はぁ・・はぁ・・」



「ねぇ、はぁ、はぁ・・
決着、着かない、んじゃ、ない?・・」


「はぁ・・はぁ・・決着は、着けないと、
いけない、のです・・はぁ、はぁ・・・」


ヒュンッ。ジュシフは一瞬でアタシの前に来る。
アタシは咄嗟にかわす、もう剣を振り上げられない。
避けるので精一杯なのだ。ジュシフは疲れながらもアタシに
剣を振り上げて来る。アタシは寸前で避け続ける。
ジュシフも自棄(やけ)になっているのか
やみ雲に剣を振っているようにも見える。


「あぁっ! いい加減! 負けてっ!下さいよっ!」


「そんなの嫌よ! アタシだって、
生きたいもの!!なんでそんなにアタシが嫌いの!?」



「嫌いじゃない・・・だって・・」

ジュシフは急に剣を振るのを止め、唇を噛む。
目には涙が溜まっている。泣きたいのを抑えているようだ。
アタシは構わず話し続ける。隠れていた月が見え始める。


「なんなの!? みんなで・・アタシだって
生きたいの! 簡単に負けて死ぬなんてしたくないの!!」


感情が入り過ぎて思わず叫んでしまう。
アタシだって戦ってまだ死にたくないのだ。
だから負けたくない。再度狗獣刃を強く握る。
そして、最後の力を込めてジュシフの刀目掛けて振り下ろす。


パぁンっ!!
ジュシフの手から勢いよく剣が弾き飛ぶ。
剣は弧を描いて地面に落下していく。気がつくと地面へと見えなくなる。
ジュシフは放心状態で立ち尽くしている。
剣が弾かれた瞬間、一滴涙を零す。


「よかった・・・杏南様・・」