幕末異聞

土方の驚いた表情を見てから、沖田は嬉しそうに鼻歌を唄いながら部屋を出て行ってしまった。


そう、蕎麦屋で男達が話していたのは楓のことであった。


“死んでいた”というのは完璧なでっち上げで、楓は寝ていただけだった。


そんなことを知るはずもない土方はあっさり騙されてしまったのだ。


(あいつの給金から俺の蕎麦代天引きだ)


なんとも間抜けな話である。