屯所の廊下を歩きながら楓は我慢の限界を迎えていた。

「自分ほんっと自己中過ぎやで?!いい加減にせんと本当に…「これ以上あそこにはいない方がいい」


楓の言葉を遮って沖田は普段では滅多に見せることのない真剣な表情で後ろを振り返る。


「…なんで?」

不思議そうな表情で聞いてきた楓に沖田は優しく微笑んだ。

「これは私の直感ですが、貴女と土方さんはどこか似ていると思うんです」


「なんやねんそれッ!!」


楓は正直、土方が苦手である。
土方のもつ鋭く冷たい目が気に入らないのだ。


(あんなんと一緒にされたらたまらん…)


「ほら、よく言うでしょ?似たもの同士は喧嘩するって。
私は土方さんのことが好きです。
もちろん楓のことも好きです」


沖田の言わんとすることが楓にはわからない。


「だから、二人が争う姿は見たくないんですよ」


「…」



――どういうことか?



それ以上沖田はそのことに触れなかった。


沖田の後を歩きながら楓は空を見上げた。



(その言葉の意味は自分で探せいうことか)


夕暮れがかった空には赤トンボが飛んでいる。



――夏が終わろうとしていた