「んで、話を戻すが、名はなんという?」

話は楓のことに向き直った。


「赤城楓。ただの流れの浪人や」


「では改めて、赤城君。君に折り入って相談がある。我々新撰組にその力を貸してもらえないだろうか?」


「…うちが新撰組に?」



至極真剣そうな近藤の提案に楓は戸惑い、黙っていた。

「さっきの試合。竹刀が脆くなっていたとはいえ、大の男でもあんなふうに真っ二つに折るのは難しい。その上あの素早さ。新撰組には君が必要なんだ!」


近藤は体を乗り出して熱弁する。


「必要…」


「はい、必要です」


独り言で言ったつもりが沖田には聞こえていたらしく、笑顔で楓に言った。


しばらく沈黙が続く。


その沈黙を破ったのは他でもない楓自身だった。




「じゃあ、入隊するわ」



なんとも間抜けな決意表明だ。


その間抜けさとは対照的に近藤と沖田は子どものように喜んでいる。


「では早速屯所内を案内します!!」

「わっ!ちょっと待ちぃ!!」


沖田は楽しそうに笑いながら楓の腕を引きさっさと部屋から出てしまった。