場所は変わって、店が立ち並ぶ河原町のとある通り。
昼ということもありとても賑わっていた。
(たまにゃ外で飯食うか)
普段こんな日の出ているうちに外出なんて仕事以外滅多にしないため、私用で外食なんてずいぶん長い間していなかった。
道いっぱいにずらりと並んでいる店を横目で見ながら何を食べるか考えている。
ふと目に留まったのは、いかにも老舗の雰囲気漂う蕎麦屋。
(蕎麦か…。最近食ってねーなぁ)
男はふらふらと店に入って行った。
どうやら今日の昼食は蕎麦に決まったらしい。
店の中は小じんまりとした外装に似合わず広かった。客の入りもいいようだ。
「おいでやす。空いてる席にお座りになって下さい」
にこにこしてやってきた店の老女に中のほうに案内され、男は壁際の一番奥の席に座った。
「掛け蕎麦をたのむ」
「はいはいただいま」
注文を受けた老女は炊事場へ消えていった。